不正咬合について(1)叢生
顎と歯のより良いバランスを実現するために-不正咬合について(1)叢生-
歯が大きすぎる、小さすぎる、上下の顎の位置関係がずれているなどの「歯並びの悪い状態」は、医学的には「不正咬合」といわれ、大きく4つのタイプに分けられます。今回から4回連続でそれぞれのタイプについて詳しく説明していきます。
第一回目は「叢生」について。
叢生とはどのような状態か
叢生とは、「正常な歯列弓(上下各々の右奥歯から左の奥までを連ねたU字の歯型)から、いくつかの歯が外れている状態」をいいます。
状態として
- 糸切り歯(八重歯)や前歯(ウサギのよう)が出てる。
- 笑うと唇が降りてこない。(歯に引っかかる)
- 歯がガチャガチャと行儀悪く並んでる。
- 一見綺麗に見えるけれども歯列弓の内側に歯が生えている。
- 歯と歯の間に隙間がたくさんある。
などがあります。そして、上下顎の骨格的なバランスに問題はないため、良好な治療結果が得られる状態です。
叢生はなぜ起こるのか
顎の大きさに対して歯が大きすぎると、収まりが悪くなります。歯が小さすぎる場合は、それほど悪影響はありませんので、今回は歯が大きすぎるために起こる叢生についてお話しを進めていきます。
一つの歯列弓には14本の歯が並びます。歯列弓の大きさは、ある程度決まっています。そこに大き目の14本の歯が並ぶとなると、無理な状態が生じます。
14個の連なった子ども用の椅子に、14人のお相撲さんが座るようなものです。何とか座れるなら良いのですが、椅子の長さは変わりませんから、だいたい2人くらいははみ出てしまいます。椅子の外に出されたお相撲さんは歯列弓の外にはみ出した歯にあたります。これでなぜ八重歯やガチャガチャした口元が生まれるか、ご理解頂けたと思います。
歯が大きすぎる場合の治療法
1.6~12歳くらいまでの成長期=顎の成長力を利用する矯正装置を付ける。
ゆっくり顎を大きくし、各歯を正しい位置に誘導する。 成長力を活用することで、大きな歯に対応したスペースを確保でき、歯を抜かずにきれいに並ばせることも期待できます。
2.12歳以上=顎の大きさと歯の本数のバランスを良くする。
(Ⅰ)抜歯することで歯(お相撲さん)の本数を減らす
昔に比べると、顎が小さくなっていますが、その一方で歯の大きさは変わっていません。そのため、糸切り歯の後ろの歯を上下左右4本抜歯し、バランスを整えます。抜かずに治す方法もありますが、抜歯をして本数を減らした方が良い結果を得られます。
(Ⅱ)歯を削る
これは本来の機能が低下するため、当院では行いません。削られた歯がたくさんあるより、元気な歯が必要なだけある方がはるかに重要です。
叢生治療によく用いられる装置
大きな分類ですが、以下のものがあります。
- リンガルアーチ<図A>
- 拡大装置<図B、C>
- ワイヤー型状記憶=ニッケルチタンワイヤー(主に歯列弓を整える)
- エラスティック=ワイヤーに沿って歯を引っ張る小さな輪ゴム
- ブラケット=歯一本一本に付けて、歯とワイヤーを結ぶ小さなボタン
これらの装置をいくつか併用して治療が行われます。それぞれは裏側から装着可能のもの、取り外し可能であったりと生活スタイルに合わせることができます。色や柄については透明なもの、パステル調のカラフルなもの、絵のついたものなど遊び心やおしゃれな要素を取り入れたものなどがあります。
天然のダイヤモンド(歯)を磨こう
最近は矯正治療中であることを、あえて見せる方が増えてきているようです。「矯正治療はステータスシンボル」の米国と同様に生活の質の高さと、健康と美容に対する意識の高さをあらわす1つとして、矯正治療が認知された証といえるでしょう。
矯正治療で白く綺麗に並んだ歯を手に入れることは、ブランド物を身に付け、髪を染め、お化粧をすることで得られる美しさとは別次元にある本物の美しさを手に入れることといえます。高いレベルでの美しさを実現させましょう。まずは、一度ゆっくりあなたの歯を鏡でご覧になってみて下さい。